もしぼっちが100人のリア充の中に入ったら ~第8話「「一人ひとり違う」と「みんな同じ」とのはざまで」~
ミュージカルも本番まであと20日となり、いよいよ大詰めとなった。
最初の合宿では誰とも話せなかったけど、今では臆せず喋れるようになった。
あれだけ苦手意識が強かったダンスが、いつしか大好きになっていた。
「楽しい」と思える時間が増えた。
それだけでも、ミュージカルに参加した意味があったように思う。
だけど本番はまだ終わってはいない。
満足感を味わい尽くすのは本番後、打ち上げの席まで取っておくこととしよう。
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8日の練習は初めての通し稽古。
これまでは各シーン毎の練習だったのが、シーン間の動きまで合わせて、全部通した。
いよいよミュージカルが形になる!ワクワクした。
通し終わった後は、「やりきった」という気持ちでいっぱいだった。
もちろんミスをした箇所もあるし、思ったようにいかなかった所もあったけど、それ以上に達成感があった。
こんな最高な気持ちを味わうために、僕は生きているのかもしれない。
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14日の練習には、このミュージカルを運営しているNPOの理事長が来られた。
理事長は「個性」について考えるワークショップをしてくださったのだが、最後にこのようなことを話された。
ミュージカルが仕上がってきて、みんな同じ方向に向かってるんだ、みんな一緒なんだと思いがちになる。
だけど、実際は一人ひとりが違うんだということをもう一度思い出してみて。違う人達が集まるからこそ面白いんだ。
僕はこの言葉で、少しだけ救われた思いがした。
この手の話は、何度も聞いたことがある話。
だけど、このタイミングでこの言葉があったことが、とても大事なように思った。
本番が刻一刻と近づき、全体の雰囲気にも熱がこもってきた。「みんなもっと頑張ろうぜ」「もっとできるはず」そんな言葉が、みんなの中に満ちている。
誤解のないよう書いておくと、僕は決してこの雰囲気が嫌ではない。
その雰囲気に乗っかれている限りにおいては、とてつもなく幸福だからだ。
それでも、「みんな同じ気持ちのはず」と言われると、僕はそこはかとなく居場所を失った気持ちになってくる。
「みんな同じはず」だと誰かに言われると、自分を「みんなと同じではありえない」と感じている僕にとっては、違和感がある。
その違和感は、どこへ持っていけばいいのかわからない違和感。気づかぬうちに、心が蝕まれてゆくのだ。
そんなことを感じていた時期だっただけに、理事長の言葉が少しだけ暖かかった。
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15日の練習は、衣装を着ての通し練習だった。
本番とほぼ同じ動きをシミュレーションすることになる。
途中で着替えもあるし、着替えの手伝いもするし、陰で歌うシーンもあるため、思っていた以上にだいぶ慌ただしい。
舞台裏は戦場だ。
一瞬でも気を抜いたが最後、舞台は崩れる。それくらいの緊張感だ。
帰り道、小学校の先生をしているキャストと話しながら帰った。
彼女は、このミュージカルに参加した経験を生かして、子どもたちの中に人を大切にする気持ちを育てたい、ということを話していた。
僕はここまでまっすぐに自分の気持ちを話せない。あまりにも人間を複雑に考えてしまい、言いよどむ。
人を尊重する心は、一朝一夕に身につくものではない。
そう思った僕は、「なんで人のことを大切だと思えるようになったの?」と聞いてみた。
「周りに恵まれてたからかなぁ」彼女はそう答えた。
そうだ、きっと多くの思いやりのある人は、きっとそうなれるだけの環境に恵まれていたのだ。
僕だって今こうしていられるのは、環境がある程度恵まれていたからに他ならない (自分が思いやりのある人だとは、間違っても思わないようにしているが) 。
彼女とだけでなく、いろんな人とこういった話ができたらいいなと思った。
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「人は一人ひとり違う、だからその違いを認め合おう、楽しもう」と多くの人が言う。
だけど一方で、「みんな同じだよね」という言葉が同時に場を支配する。誰もが、みんなを同じにしたがるし、みんなと同じになりたがる。
周りと同じになることには、どうしようもないくらいに安心感がある。
どうやら「同じになろう」という圧力は、「個性を大事に」という言葉なんか平気で押し潰してしまうくらいには強力らしい。
それでも、「違いを認め合おう、楽しもう」という言葉を信じてゆけるだろうか。
いや、強い心で信じていかなければならないのかもしれない。だってそれだけ、同じになりたいという誘惑は強いのだから。
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興味を持った方は、ぜひ以下のリンクからチケットをご購入ください!
ミュージカル A COMMON BEAT
〜感じてほしい共通の鼓動〜
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〜第53期関西公演〜
▼公演日時
①10月12日(土) 開場19:00/開演19:30
②10月13日(日) 開場12:30/開演13:00
③10月13日(日) 開場17:00/開演17:30
※公演は90分を予定しています
▼公演会場
あましんアルカイックホール(兵庫県)
http://www.archaic.or.jp/guide/access.html
▼チケット購入方法
以下のページから、チケットをご購入ください。
ご購入後、僕からチケットをお送りします。
https://www.quartet-online.net/ticket/kansai53?m=0mjggah