大学生のための、生きやすさを生み出すための恋愛序説③「「若さモテ」に気をつけろ」

今回は「先輩からモテる」ことに潜む罠についてです。

 

大学に入学して一番最初の大イベントに、サークルの新歓があります。どのサークルも、新入生を獲得するために血眼になって勧誘をかけます。

 

僕は学生時代は混声合唱をしていたのですが、混声合唱はパート毎のバランスが大事であり、男性の方が声量が大きくなりやすいため、女性が少ないと聞こえるべきところが聞こえなくなってしまうということになります。そのため、女性を獲得することは毎年新歓の至上命題であり、あの手この手を使って女性の獲得に躍起になっていたことを思い出します。

しかし今思うと、この考え方は非常に歪んだものでした。なぜなら、そこでは女性はサークルを成り立たせるための「手段」としてしか見られず、ひとりの人間として尊重するという考えにはならないからです。その空気に僕も知らずしらずのうちに巻き込まれ、女性を「手段」と見なす考えを形成してしまったように思います。

本来なら、どのようなメンバー構成になったとしてもそこからベストな音楽を作っていこう、というのがあるべき姿のはずです。大学の混声合唱団のみなさまにはぜひ、自団体のあり方を見直してほしいと願う次第です。

 

男性が女性向けの記述を書くことの危うさ

 

今回はどちらかと言えば女性向けの話になると思うのですが、非常に偏った記述になっているかもしれません。

 

そもそも、男性が女性向けの記述を書くことには、常に危うさが潜んでいます。

なぜなら、この社会では男性は知らずしらずのうちに下駄を履かされている場面が多々あり、「全体として見れば」男性であることは優位性を持ってしまうためです*1。優位な立場にある男性が女性のことについて語るというのは、常に女性への「見下し」を免れることができません。

また恋愛においては、依然として男性が欲望「する」側、女性は欲望「される」側であるという認識がまかり通っています。そのため、男性が女性について語ること自体に、「男性に欲望されるような女性であれ」というメッセージが潜んでしまいます。

 

じゃあ、なぜこの記事を書くのか。それは僕自身が、男性の問題と女性の問題が、コインの裏表の関係にあると思っているからです。

 

前回の記事にて、現在の社会には「彼女がいる=有能である」すなわち「彼女がいない=童貞=無能である」と思い込ませる構造が存在していることを明らかにしましたが、その構造は女性の恋愛にも大きな影響を及ぼしています。

詳しくは二村ヒトシ『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』を読むことをお勧めしたいのですが、この記事では僕なりに、社会の構造と適度な距離を保ちつつ、幸せに生きるために必要なことを考えていきたいと思います。

 

なんだか前置きが長くなってしまいましたが、本題に入りましょう。

 

「若さモテ」とは何か

 

さて、大学に入った女性が、 (特に年上の) 異性との交流機会が急激に増えることでいきなりモテ始めることは、本当の本当によくあります。

まだ右も左も分からない新入生に、先輩たちはとても優しいです。優しくて頼りになる先輩に、あなたは「男らしさ」を感じるかもしれません。もしかしたら、告白されることもあるでしょう。いずれにせよ、チヤホヤされるのはとても気持ちがいいものです。

 

ですが、その「モテ」は、本当に良い「モテ」なのでしょうか?

 

身も蓋もないことを言いますが、優しくしてくる人たちの中には、あなたが「若い女性だから」優しくしているという人が少なくありません (かつて自分にもそういうところがあったからこそ言えるのですが) 。 

もちろん純粋にあなたの力になりたい、人間としてのあなたに惹かれたというケースもあるでしょう。しかし、「だって好きだから」という大義名分で「経験値稼ぎ」のために女性を利用しようとする男性は、残念ながら少なくありません。なぜかと言えば、男社会の中には、年下の女性と付き合えること、あるいはセックスできることが、男としてのステータスになるという側面があるからです (これは前回の記事でも述べたところです) 。

 

では、女性を取り巻く社会構造とは一体何なのでしょうか?

 

大学でいきなり「女らしさ」に巻き込まれる女性たち

 

高校までの期間において、多くの女性は「一人前の自立した人になれ」というメッセージを学校から受け取り、「男性に欲望されるいい女になれ」というメッセージを情報誌やネットなどのメディアから受け取っています。この相矛盾したメッセージは、実は多くの女性をしんどくさせているのではないかと、僕は想像しています。

それでも高校までは、校内にいる限りでは交流する人の層が限られているため、過剰に「女らしさ」を意識することもなかったのではないでしょうか。

しかし大学に入ると、途端に社会が作り上げた「男に好かれる女、モテる女がいい女である」という風潮に「巻き込ま」れ、戸惑いを感じる人が少なくないように思います*2。「高校までは自分らしくいられたのに、大学に入ってから「女ってこういうもの」みたいな空気に戸惑った」と、ある女子校出身の友人は話していました。

 

近年は就職予備校化しているところもありますが、大学は (入学難易度が高ければ高いほど) 世間から離れて、真理を追求できる場です。

しかしその一方で、大学は「こうしなければいけない」という決まりがほとんどなく、基本的に自由であるため、社会の風潮がよく反映される場でもあります。ですから、多くの人が大学で知らずしらずのうちに「男とはこういうもの」「女とはこういうもの」という価値観を身に付け、その価値に合わせようと必死になったり、あるいは「自分は女らしくない」という自己否定に陥ってしまったりしてしまうのです。

 

「自分はどうしたいのか」が一番大切

 

もちろん、どのような人に自分はなりたいのか、男性の好意をどう受け止めるのかは個人の自由です。もしかしたら、今まで気づいていなかった自分の魅力に気付き、自分の可能性を広げるきっかけになることもあるでしょう。

しかし同時に、「自分はどういう恋愛がしたいのか」について自分で掘り下げることも、また大切なことだと思います。自分のことを知った上で、もし自分が望まないお付き合いやセックスをさせられそうになった時は、ハッキリと断る覚悟もいるかもしれません。

 

自分のことを知ろうとする経験を重ねておくと、いずれ来る就活の時にとても役に立ちますし、何より自分を大切にできるようになります。

「どんなことに幸せを感じるのか?」「自分は何が許せて、何が許せないのか?」を知っておくことによって、本当は望んでいないことをせずに済むようになり、自分が本当にしたいことが見えてくるのではないかと思います。

 

あなたはモテるから価値がある訳ではない。あなたはあなただからこそ素晴らしいのです。ぜひ、ありのままの自分自身を大切にしてあげてほしいなと、僕は思ってしまうのです。

*1:もっともそのことは、失業や引きこもり等で社会から弾き出された男性が生きづらくなるのと表裏一体です

*2:もちろん、所属するコミュニティによって風潮は異なります。あくまで全体的な傾向として見れば、という話です